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Torricelli トッリチェッリ(伊)
概要
伊torricella「小塔」に由来。「小塔の近くの住人」、「のっぽ」を意味するか、同語源の地名に因む姓。
詳細
Ribaldonum de Torricellis(1317年Novara(ピエモンテ州))1
Franciscus de Torecela de Lugano, quondam Simonis(1510年Lugano(スイス、ティチーノ州))2
Jacobino de Torixella(1408年Voghera(ロンバルディーア州))3
Dalinianus de Rangonibus de Turricellis(1440年Milano(ロンバルディーア州))4

居住地姓、ニックネーム姓、地名姓。トリチェリ、トリチェッリとも。エミーリア=ロマーニャ州に特に多い。イタリアの物理学者エヴァンジェリスタ・ トッリチェッリ(Evangelista Torricelli:1608.10.15 Faenza(エミーリア=ロマーニャ州)~1647.10.25 Firenze(トスカーナ州))の姓。単数形の トッリチェッラ(Torricella)姓は全国的に僅かに散在する。

伊torre「塔」の指小形である伊torricella「小塔」5に由来し、「小塔の近くの住人」、或いは単純に「(小塔の様に)背がとても 高い人」を表した姓である。スイス南部のルガーノのトリチェッリ家は、同地で最も活躍した貴族の一つ。その権勢が故に、ルガーノの聖ロレンツォ 司教座大聖堂のバロック様式の絵画的装飾の中に、ジュゼッペ(Giuseppe)とアントーニョ(Antonio)のトリチェッリ兄弟の名前と関係付けられるものが あるという2。ルラーティ(Ottavuo Lurati)によれば、この家系の姓は自分達に付与された大権の領域を塔に見立てて、 その様に名付けられたものと説明している2。然し、実際にはルガーノ近郊にTorricellaという地名があり、この地名から 起こったと見るのが妥当だろう。地名は13世紀中葉に既に現れているのに、この貴族の家名は1468年2が 初出であるからだ。以上の様に、同語源のイタリア語圏各地に存在するトッリチェッラ(Torricella)という地名に由来する場合もありえる。

●伊北部エミーリア=ロマーニャ州パルマ(Parma)県のコムーネ、シッサ(Sissa)の小地名トッリチェッラ(Torricella)

●伊北部エミーリア=ロマーニャ州リーミニ(Rimini)県のコムーネ、タラメッロ(Talamello)の小地名トッリチェッラ(Torricella)
Torzella(1290年頃)6

●伊北部エミーリア=ロマーニャ州ラヴェンナ(Ravenna)県のコムーネ、ファエンツァ(Faenza)の小地名トッリチェッラ(Torricella)

●伊北部ロンバルディーア州クレモーナ(Cremona)県のコムーネ、トッリチェッラ・デル・ピッツォ(Torricella del Pizzo)
川沿いにあった要塞にちなんだ名前7

●伊北部ロンバルディーア州パヴィーア(Pavia)県のコムーネ、トッリチェッラ・ヴェルツァーテ(Torricella Verzate)
Turricella(13世紀)8

●伊北部ロンバルディーア州マントヴァ(Mantova)県のコムーネ、モッテジャーナ(Motteggiana)の小地名トッリチェッラ(Torricella)

●伊中部ラツィオ州リエーティ(Rieti)県のコムーネ、トッリチェッラ・イン・サビーナ(Torricella in Sabina)
地名初出は1019年9

●伊中部ラツィオ州ラティーナ(Latina)県のコムーネ、フォンディ(Fondi)の小地名トッリチェッラ(Torricella)

●伊中部アブルッツォ州キエーティ(Chieti)県のコムーネ、トッリチェッラ・ペリーニャ(Torricella Peligna)
Turricellam(1168年:出典Catalogus baronum)10

●伊中部アブルッツォ州テーラモ(Teramo)県のコムーネ、トッリチェッラ・シクーラ(Torricella Sicura)

●伊中部マルケ州ペーザロ・エ・ウルビーノ(Pesaro e Urbino)県のコムーネ、フォッソンブローネ(Fossombrone)の小地名トッリチェッラ (Torricella)

●伊中部ウンブリア州ペルージャ(Perugia)県のコムーネ、マジョーネ(Magione)の小地名トッリチェッラ(Torricella)

●伊南部プッリャ州ターラント(Taranto)県のコムーネ、トッリチェッラ(Torricella)
恐らく10~11世紀に起源を持つ11

●スイス南部ティチーノ(Ticino)州ルガーノ郡のコムーネ、トッリチェッラ・タヴェルネ(Torricella-Taverne)
Torexella(1254年)12
Tabernas de Torexella(1437年)12
Torricella, Taverne(1473年)12

他にも同名の地名は無数に存在すると思われるが、キリが無いのでここで留める。イタリアは地名の研究が他のヨーロッパ諸国に比べ進んでおらず、 資料が中々集まらない。尚、Torricchia(エミーリア=ロマーニャ州、Dovadola)やTorrecchia(エミーリア=ロマーニャ州ラヴェンナ県 Bevano川沿い)もラturricula「小塔」の後裔で6、同語源である。
[Lurati(2000)p.472,Francipane(2005)p.696f.,Minervini(2005)p.486,Rossoni(2000)ton項,ONC(2002)p.618]
◆伊torricella「小塔」←ラturricula「小塔、鳩小屋」(-culaは二重指小辞(女性形))←turris「塔」(cf.オスクtiurri≪単数対格形≫「塔」)← ギtúrris,túrsis,túrsos「塔」←?13。語源不明。シャントレヌのギリシア語源辞典には、地名Bou-dorgísの後半に見えるイリュリア語の地名要素 dorgisや、加えて更に古いリュディア語の地名Túrra,Túrsaと関係付ける説を紹介している。更に、ホイベック(Alfred Heubeck)の著作"Praegraeca" (1961年)に挙げる印欧祖語*dhergh-「堅固な、堅い」のゼロ階梯形*dhgh-に由来するとの説を引用している。 ボワザックの語源辞典では、ギTursēnoí「エトルリア人」の原義を「塔の建造者」と解釈し、Etruscan「エトルリア人」等と同語源とする。
1 Joannes Georgius Graevius "Thesaurus antiquitatum et historiarum Italiae, Neapolis, Siciliae, Corsicae." (1722)"Supplementum ad Cortusiorum Historiam. Comitis Pii de Comitibus, Patrici Veneti, Nunc primum editum."p.13
2 Lurati(2000)p.472
3 Di S. M. Il Re Di Sardegna "Dizionario Geografico Storico - Statistico - Commerciale Delgi Stati. vol.26" (1854)p.295
4 Allgemeine Geschichtforschende Gesellschaft der Schweiz "Archiv für schweizerische Geschichte. vol.18" (1873)p.388
5 DLI vol.7(1826)p.127
6 Polloni(1966)p.315
7 http://www.italiapedia.it/comune-di-torricella-del-pizzo_Storia-019-108
8 http://it.wikipedia.org/wiki/Torricella_Verzate
9 http://www.italiapedia.it/comune-di-torricella-in-sabina_Storia-057-069#titoloScheda
10 http://www.italiapedia.it/catalogus-baronum_appr_24_comune-di-torricella-peligna_069-095
11 http://www.italiapedia.it/comune-di-torricella_Storia-073-028
12 Bernardino Croci Maspoli "Historischen Lexikon der Schweiz"サイト中 (http://www.hls-dhs-dss.ch/textes/d/D2212.php)
13 英語語源辞典p.1451、Boisacq(1916)p.993、Chantraine(1968-80)p.1147

執筆記録:
2012年5月14日  初稿アップ
PIE語根Torri-c-ell-i:1.語根不詳;2.*-ko- 指小辞;3.*-lo- 指小辞;4.*-(o)i 強意・現在・複数を表す語尾

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