Solskjær スールシャール(ノルウェー)
概要
ノルウェー中西部の無人島スールシャーレト(Solskjæret)に由来する。語源はノルウェーsol「太陽」+ノルウェーskjær「岩礁」。
詳細
Petter Solskjer(1748年Nordmøre(ムーレ・オ・ロムスダール県))1
Anna Catharina Solschier (1753年Malmo(スウェーデン))2
Engel Joensen Soelskjær(1805年Edøe(ムーレ・オ・ロムスダール県Smøla))3

地名姓。ノルウェーのサッカー選手、サッカー指導者オーレ・グンナー・スールシャール(Ole Gunnar Solskjær:1973.2.26 Kristiansund (ムーレ・オ・ロムスダール県)~)の姓。非常に珍しい姓で、2014年の統計では59人が確認されるのみである4。 ノルウェーの電話帳サイトで登録されているSolskjær姓の人物は37名いるが、その約半数の19名がムーレ・オ・ロムスダール県在住で、これは 古い記録とうまく合致しており、同県発祥の苗字であると見て良い(二番目に多いのは9件のオスロだが、都市部への人口流出に伴うものだと 見なされる)。県内の内訳は、クリスティアンスン市(Kristiansund)の10件が最多で(サッカー選手の出身地も同市)、次いでヴェストネス(Vestnes) 村の5件が続く。

ノルウェー中西部ムーレ・オ・ロムスダール県中部ロムスダール(Romsdal)地方アウクラ(Aukra)村北部の無人島 スールシャーレト(Solskjæret)に由来する地名姓である(マルピコス説)。クリスティアンスンの南西約50㎞に位置する無人島で、 距離的には近い。島の座標は 北緯62度52分35秒、東経06度47分01秒で、微細地名の為、Google地図の最大拡大図でも地名表示がなされない。 面積約7500㎡程の小島で、人が住める様な場所ではないが、苗字は本島の所有者が名乗りだしたものか、或いは消失した同語源の別地名に由来する ものか、どちらかは不明である。一応、本島の北東1.5㎞の位置に人が住むハマルエヤ(Hammarøya)諸島が有るので、何らかの形で 人がスールシャーレト島に関わる事は出来た可能性はあると思う。因みに、ヴェストネスの市街地は本島の南30㎞の位置に在り、こちらも かなり近く、スールシャーレト島の名に因む姓と見て間違いないだろう。

地名の語源自体は、ノルウェーsol「太陽」5(英sun,ラsōl「太陽」と同語源、cf.英solar)+ノルウェーskjær≪中性名詞≫ 「岩嶼(ガンショ)、岩礁」6, 7より形成され、「日の岩島、日当たりの良い岩礁」を意味する。語末の-etは中性名詞の単数 特定形の指標で、要するに後置定冠詞である8(cf.オーエン(Oen))。第二要素のskjærはノルウェー語の二大文語の一つであるブークモールの語形で、もう一方の ニーノシュクの語形skjer9の形でも地名では用いられ、どちらも小さな岩島・岩礁を指す地名要素としてノルウェーで 多用されている。両語形の違いは、本来的には方言の差異による。

この様な岩嶼・岩礁地形はノルウェーの沿岸上に多数見られ、背の低いものは暗礁として存在し、船上からも判別出来るものも有る。従って船舶の 座礁の恐れが有る為、この様な岩嶼のマッピング・地図化は航海上の最優先事項とされてきた。現在もノルウェー沿岸では未知の暗礁に座礁する 危険性が付きまとい、最近では2004年1月19日にベルゲン沖の暗礁に捨石船(ステイシセン)10 MVロックネス号(MV Rocknes)が座礁し、乗員30名の内 18名が犠牲となる惨事が有った。事故は正規の航路を右舷側に外れ過ぎて航行したのが原因であった。そもそも、スカンジナビア半島の名称自体が 座礁に因んだものと見られ、ノルド祖語の*skaðinawjō「損害の水辺」(第一要素は独Schaden「損害」と同語源)に由来するとする説 11が、最近最も有力視されている。
◆ノルウェーskjær,skjer「岩島、岩礁」←古ノルドsker「(辛うじて海面上に頭をのぞかせている)岩礁」←ゲルマン*skarjam(a語幹中性名詞)「岩礁」 (古英scorian「突き出る」,古高独scorro,skorro「岩礁、岩の出っ張り、岩」)←*skeran「短く刈る、切る」(英shear「毛を刈る、刈り取る」,独scheren 「短く刈る」, etc.)←PIE*sker-「切る」12。恐らく、原義は「(船を)切り裂く場所」、或いは「短く切った(様に 水面に少しだけ頭が出ている)場所」であろう。
1 Maurits Fugelsøy "Tustna før og no. vol.2"(1956)p.19
2 https://familysearch.org/ark:/61903/1:1:V7YL-RP6
3 http://www.rhd.uit.no/kirkebok/kbliste.aspx?kb=d&rr=47875
4 http://www.ssb.no/navn/
5 http://no.wiktionary.org/wiki/sol
6 Karl Baedeker "Norway, Sweden and Denmark: Handbook for Travellers."(1892)p.22
7 http://no.thefreedictionary.com/skj%C3%A6r
8 http://no.wiktionary.org/wiki/-et
9 http://www.sprakradet.no/Sprakhjelp/Raad/Norsk-for-engelsk/Avloeserord/Aktuelt-eksempel-rockhopping/
10 英語ではrock-dumping vesselという。埋め立て地の造成などの際、岩石・土砂を運搬・投入する為に利用される。
11 清水誠 『ゲルマン語の歴史と構造 (3) : ゲルマン祖語の特徴 (2), 古ゲルマン諸語 (1)』p.72
12 http://www.koeblergerhard.de/germ/germ_s.html

更新履歴:
2015年4月5日  初稿アップ
PIE語根①Sol-skjær: 1.*sóəwl̥(弱格語幹*səuén-)「太陽」; 2.*(s)ker-¹「切る」

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