Schiaparelli スキャパレッリ(伊)
概要
伊≪リグーリア方言≫scciapâ「真っ二つに割る」,≪ピエモンテ方言≫sciapè「縦に割る」の動作主名詞の指小形に由来。「樵、薪割り」等の意。
詳細
Ianello Claparellus Mancus(13世紀Bonifacio(仏、コルス=デュ=シュド県))1
Antonius de Schiaparelis(1447年Parma(エミーリア=ロマーニャ州))2
Gabriel de Schiaparelis(1449年Parma)3
Johannes Jacobus de Schiaparelis(1469年Parma)4
ser Joannis de Chiaparelis(1534年Padova(ヴェーネト州):彫刻家)5

職業姓。極めて珍しい。ピエモンテ州やリグーリア州といったイタリア北西部に分布比重が偏っており、特にピエモンテ州北部の町ビエッラ(Biella)に 集住。イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキャパレッリ(Giovanni Schiaparelli:1835.3.14 Savigliano(ピエモンテ州)~1910.7.4 Milano (ロンバルディーア州))や、その姪であるイタリアのファッション・デザイナーのエルザ・スキャパレッリ(Elsa Schiaparelli:1890.9.10 Roma~ 1973.11.13 Paris(仏))が有名。同源異綴の姓にキャッパレッリ(Chiapparelli:ローマに多い)が有り、スキャパレッリ姓より有り触れている。

本姓は古くは頻繁に(de) Sclaparellisと綴られていたと指摘されているが6、私が調べた限りでは一次史料でこれを証する記録を 発見できていない。記録の時期・地域の言及も無く詳細不明だが、語源的には正しい綴りなので興味深い。 13世紀のコルシカ島でのClaparellusという綴りも語源的。連続した記録が現れるのは15世紀中葉のパルマからである。

伊≪リグーリア方言≫scciapâ「真っ二つに割る」7,伊≪ソルダーノ(リグーリア州)方言≫sciapà「木材を細かく 切り裂く」8,伊≪ピエモンテ方言≫sciapè「縦に分割する、縦に割る、真っ二つに割る」 9, 10,伊≪パルマ方言≫sciapàr「木材を細かく切り裂く」11(いずれもscia-は/stsa/ 又は/stʃa/と読むと見られる12)に動作主派生名詞形成接尾辞-aroが接続して生じた*sc(h)iapparo「切り裂く人」の 指小形に由来する渾名*Sc(h)iapparelloの複数形に基づく。恐らく「木挽き職人、樵、薪取り、薪割り、材木加工業者」など、現代の林業関係者に相当する 職能者が名乗りだした姓であろう。又、伊≪パルマ方言≫sciaparoèul「(籠職人が用いる)籠編みに使う若枝や棒を切る鉄製道具」 11という工具名に直接因む可能性もあり、「木製籠職人」を意味する場合もあるのではないかと思う(特に15世紀の パルマの記録に対して)。現在の姓の綴りは標準語形の伊schiappàre「殴る、叩く、木材を細かく切り裂く(fendere far scheggia d'alcun legno)」 13, 14に影響されたものか、語頭の/skʲa/→/stʃa/変化前の古形が公文書などで墨守されて化石的に残ったものかの どちらかと考えられる。
[ONC(2002)p.550]
◆伊schiappàre「殴る、叩く」←俗ラ*sclapare「殴る」(古仏claper「舌打ちする」,プロヴァンスesclapà「縦に割る」,clapar「叩く」)←*(s)clap- (擬音語語根)15, 16

対応する古典ラテン語の単語が無く、イタリアとフランスにしか対応語が確認できない。俗語における擬音語から生じた比較的新しい語では ないかと思う。更に遡れば、ゲルマン語からの借用ではないか(私マルピコスの勝手な考え):ゲルマン*klap(p)ōn「パタンと音を立てる、 お喋りする、殴る」(古英clæppan,clappian「トントンと叩く」,古フリジアkleppa,klippa「鳴る、打ちつける、抱擁する」,古ザクセンklapunga 「カタカタ鳴る音」,古高独klapfōn,klaffōn「どしんと音を立てる、騒ぐ、がちゃがちゃ鳴る」,古ノルドklappa「殴る、トントンと叩く」)←? (語源不明)17。ゲルマン*klap(p)ōnはPIE*gal-「呼ぶ、鳴く」に遡らせる説もあるが17、 派生経過が明らかでなく疑問。尚、語頭に(e)s-を伴う形と伴わない形が有るが、前者はラテン語の接頭辞ex-(意味を強める働きが有る)を伴った *exclapareに由来するとの説が有る16(音韻的には有り得る)。cf.クロプシュトック (Klopstock)
1 Mauro Maxia "I Corsi in Sardegna."(2006)p.52
2 Angelo Pezzana "Storia della città di Parma continuata. vol.2"(1842)p.41
3 Angelo Pezzana "Storia della città di Parma continuata. vol.3"(1847)p.405
4 Antonio Aliani "Il notariato a Parma: la matricula collegii notariorum Parmae : 1406-1805."(1995)p.220
5 Erice Rigoni "Medioevo e umanesimo. vol.9"(1970)p.244 脚注3
6 "Rivista di astronomia e scienze affini. vol.6"(1912)p.vi
7 『イタリア語=リグーリア方言辞典』2015年11月18日閲覧
8 『ソルダーノ方言=イタリア語辞典』2015年11月18日閲覧
9 Casimiro Zalli "Disionari piemontèis, italian, latin e fransèis. vol.2"(1815)p.378
10 Michele Ponza "Vocabolario piemontese-italiano e italiano-piemontese."(1847)p.495BR> 11 Ilario Peschieri "Dizionario parmigiano-italiano."(1828)p.494
12 標準イタリア語のsciという連綴は子音[ʃ]を表すが、北部方言ではそうならない場合が有る。例えば、中世ラテン語のsclavus「奴隷」 から標準イタリア語のschiavo「奴隷」が生じているが、ヴェネチア方言では/stʃa(:v)o/と発音するscia(v)o「奴隷、僕」に発達している。 辞書類では、この様な発音を示す場合は[ʃ]音のsci-と区別してs-ci-という風にsとcの間にハイフンやコンマを入れて表記される。余談だが、 この語頭子音の脱落形であるヴェネチア方言ciaoは「(貴方の忠実なる)僕」というへりくだりの意味合いから、挨拶の言葉の「チャオ」となっている。 その他、[LIJ] Cognomi liguri (e no)参照。
13 Giuseppe Ballerini, A. Rossi, G. Marsigli, Marianna De Marinis "Dizionario italiano-scientifico-militare per uso di ogni arme."(1824)p.730
14 Antonio Bazzarini "Vocabolario usuale tascabile della lingua italiana."(1843)p.645
15 Ottorino Pianigiani "Vocabolario etimologico della lingua italiana. vol.2"(1907)p.1226
16 Giuseppe dal Pozzo "Glossario etimologico piemontese."(1893)p.314
17 http://www.koeblergerhard.de/germ/germ_k.html

更新履歴:
2015年11月20日  初稿アップ
PIE語根Schiap-ar-ell-i:1.語源不明;2.語源不明; 3.*-lo-指小接尾辞; 4.*-i 強意・現在・複数を表す語尾

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