Robespierre ロベスピエール(仏)
概要
消失地名に由来すると思われるが不明。二つの説が有る。
①ラrobur ex petris「岩から(生えた)オーク樫」に由来し、「岩の中に根っこが入り込んで生えているオーク樫」の意。
②男名Robert+仏pierre「石、岩」に由来し、「Robert(人名)の岩」の意。
詳細
Bauduin de Rouvespierre(1431年Cambrai(ノール県):牧師)1
Willaume de Rouvespierre(1462年Cambrin(パ・ド・カレー県))2
Jehan de Rouvespières(1477年Châtelet(パリ))3
de Robespré(1511年:個人名記載無し)4
de Robespierre(1569年:個人名記載無し)4
Katherine de Roberpiere(1588年:以下Jehanまでの4人は兄弟、場所未確認)5
Robert de Roberspier(1590年)5
Robert de Roberspierre(1591年:上記とは別人物)5
Jehan de Roberspierre(1594年)5
Robert Spier(1610年:個人名記載無し)6
de Robespre(1628年:個人名記載無し)6
Drobespierre(1652年:個人名記載無し)6
Roberts Pierre(1671年:個人名記載無し)6
Yves DRobespierre(1697年Carvin(パ・ド・カレー県):針商人)7
Thérèse Derobespierre(1725年Carvin)8

地名姓?。語源の明らかでない姓である。フランスの政治家マクシミリアン・ド・ロベスピエール(Maximilien de Robespierre:1758.5.6 Arras (パ・ド・カレー県)~1794.7.28 Paris)で知られる非常に珍しい姓。

ドザ(Albert Dauzat)のフランス姓語源辞典や『Oxford Names Companion』、多くの伝記ではフランスの男子名ロベール(Robert)とピエール (Pierre)が結合して生じた名前だと説明されているが、姓の最初期の綴りや15~16世紀の記録では常に前置詞de「~から」を伴って 現れている点から、誤りであると見るのが無難である。地名に由来する苗字であると見られるが、今のフランスにこの名前と関係の有りそうな 地名は現存しておらず、消失地名を起源としていると見る他無い。多分、ノール県かパ・ド・カレー県といったノルマンディー地方東部に 存した地名が元になっているのかもしれない。ただ、初出形Rouvespierreやそれに類する形が姓としての用例以外に今の所確認出来ないので、 本当に地名由来であるのかも確実ではない。既に初出形Rouvespierreが本来の語源的祖形から相当に転化してしまっているのかもしれない。

この名が地名に由来しているとする仮説が既に二つ挙がっているので、以下に紹介する。
①ラテン語のrobur ex petris「岩から(生えた)オーク樫」に由来し、「岩の中に根っこが入り込んで生えているオーク樫(un rouvre ou chêne qui a pris racines dans les pierres)」を意味する9。誰が最初に提唱した説か不明だが、1912年の文献には既に見えて いる。
②第一要素は男名Robert(ゲルマン語起源で「誉れ+明るい」の意)、第二要素は仏pierre「石、岩」に由来し、「Robertの岩」を意味する 4。男名Pierreも「岩」を意味し同語源なので、この解釈はドザやONCが主張する説と語源的には軌を一にする。

いずれの説も疑わしい点が多く、特に前半要素の説明が音韻的に難が有る。より古い語形が見つからない限り、確実な説明は今後も難しいだろう。 現在の語形は第一要素を男名Robert由来と再解釈した民間語源によって、過剰修正されたものとも考えられる。
◆仏rouvre「オーク樫」←古仏rou(v)re←ラrōbur(属格rōboris)(r語幹中性名詞)「オーク樫」(オックrove「オーク樫」,西roble,robre「オーク樫」, カタルーニャroure「オーク樫」,アラゴンrobre「オーク樫」,葡roble「オーク樫」,伊róvere「ツクバネガシ」)←ruber「赤い」←PIE*rudh-ro-(ギeruthrós 「赤い」,ウンブリアrufru「赤い」,古ノルド≪西部方言≫rođra「血」,古露rĭdryj,redryj「茶褐色の、赤黄色の」,サンスクリットrudhirá「赤い;血」,トカラB ratre「赤い」)←reudh- 「赤い」10, 11
1 "Annales révolutionnaires. vol.7"(1914)p.179
2 "Annales révolutionnaires. vol.7"(1914)p.180
3 "Bulletin de la Société de l'histoire de Paris et de l'Ile-de-France. vol.38"(1911)p.123
4 http://www.geneanet.org/nom-de-famille/robespierre
5 "Mémoires de l'Académie des sciences lettres et arts d'Arras. vol.3"(1864)p.41
6 Henri Couvreur "La tour de Carvin: monument historique."(1968)p.54
7 "Œuvres de Maximilien Robespierre: Œuvres littéraires."(2000)p.203
8 Albert de Marquette "Histoire générale du comté de Harnes en Artois jusqu'à 1789: et de la connétablie de Flandre, 1093 à 1385 : suivie de celle de Robert Robespierre et de sa famille de 1431 à 1792. vol.3"(2006)p.459
9 Maximilien Robespierre, Victor Barbier, Charles Vellay "Œuvres complètes de Maximilien Robespierre."(1912)p.204
10 英語語源辞典p.1193、Buck(1949)p.1056、http://en.wiktionary.org/wiki/Appendix:Proto-Indo-European/h%E2%82%81rewd%CA%B0-
11 Валерий Васильев "Славянские топонимические древности Новгородской земли."(2014)p.544

更新履歴:
2015年5月3日  初稿アップ
PIE語根 ①Rob-es-pie-rre: 1.(?)*reudh-¹「赤い、血色のよい」; 2.(?)*eghs「外に」; 3.(?)*per-¹「前へ進む」; 4.(?)*-tro- 道具名形成接尾辞
②Ro-be-s-pie-rre: 1.(?)*kar-²「声高に讃える、絶賛する」; 2.(?)*bherəg-「輝く;明るい、白い」; 3.(?)*-és 属格語尾; 4.(?)*per-¹「前へ進む」; 5.(?)*-tro- 道具名形成接尾辞

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