戻る/ はじめに/ 苗字苑本館/ ハリポタ語源辞典/ 銀英伝語源辞典/ 付録/ リンク集
苗字リストに戻る
Münchinger ミュンヒンガー(独)
概要
「*Munic(h)o(人名:←ゲルマン*muniz「考え、感覚」)一族の地所」を意味するミュンヒンゲン(Münchingen)という地名より。
詳細
Ulrich der Munichinger(1358年Weilheim(バーデン=ヴュルテンベルク州ヴァルツフート郡))1

地名姓。シュトゥットガルト周辺、特にエンツ郡(Enzkreis)に集住。ドイツの指揮者カール・ミュンヒンガー(Karl Wilhelm Münchinger:1915.5.29 Stuttgart(バーデン=ヴュルテンベルク州)~1990.3.13同地)も集住地の出身。16世紀には非円唇音化したMinchingerの形での用例が多く見られる。 ミュンヒンゲン(Münchingen)と言う名の、バーデン=ヴュルテンベルク州に二ヶ所存在する以下の地名に由来する。地名の歴史上の変遷も列挙する。

●バーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルト行政区域ルートヴィヒスブルク(Ludwigsburg)郡コルンタール=ミュンヒンゲン(Korntal- Münchingen)市内の地名ミュンヒンゲン(シュトゥットガルトの北西11㎞にある(88Ka55))
in villa Munichingen(1137-1138年:1500年写本)2
Rudigerus de Munchingen(12世紀:人名)2
.. dictus Schecginger de Mvnichingen ... in dicto loco Můnichingen ... dictus Rescho de Můnichingen ... in loco Mnechingen ... , item super aliis bonis suis apud Mnichingen sitis in loco, ...(1255年)3
sitam in Mvnechingen(1260年)4
Múnechingin(1275年)2
de Minchingen(1293年)2
Muonichingen(12-13世紀)5
Hugo de Munichingen(1304年:人名)2
Múnchingin(1466年)2
特殊アルファベットが多用されていて表示するのが面倒なので省くが、脚注3の文献の5~11巻にかけて、この地名は13世紀の間様々な綴りで現れる。

●バーデン=ヴュルテンベルク州フライブルク行政区域ヴァルツフート(Waldshut)郡ヴータハ(Wutach)村内の小地名ミュンヒンゲン(105Ic61)
in loco Munichinga(912年)6, 7
Munechingen(1275年)6

いずれも同語源で、「*Munic(h)o(人名)一族の地所」6, 8を意味する。人名ムニコ(*Munic(h)o)は文証されていないが、 ゲルマン*muniz(i語幹男性名詞)「考え、感覚、愛、欲求」9(古英myne「記憶、感覚、愛」,古ノルドmunr「精神、命、意思」, ゴートmuns「考え、意見、決意」)9を第一要素に持つ男子名、例えばムニペルヒト(Muniperht) 10、ムニフリド(Munifrid)10、ムネギスィル(Munegisil)10、 ムニヘルム(Munihelm)10、ムンワルド(Munuald)10、ムノルフ(Munolf) 10等の短縮名である。末尾の古高独-ic(h)oは指小辞で、短縮名に頻用される要素である。従って、男名*Munic(h)oは文献上の 記録が無いだけで、論理上有り得る形である。後、古高地ドイツ語における音韻変化により(ウムラウトや子音kの弱化)、中高独mün(i)ch, münech,munich「修道士」11(>独Mönch)と全く同じ形になってしまい、影響を受けたものと思われる。従って、中高独 mün(i)ch「修道士」とは語源上無関係と思う。特にヴータハのミュンヒンゲンの様に、10世紀にまで遡る古い-ing(en)地名12が 中高独mün(i)chや、その前身である古高独munih「修道士」11といった外来語に由来しているというのは難しい (古高独munih「修道士」に由来している可能性もゼロでは無いが、非常に低いだろう)。

最後に少し話を脱線。ゲルマン*muniz「考え、感覚」は、地名ヒューストン(Houston)や男名ヒューバート(Hubert)の第一要素の語源である ゲルマン*χuguz(u語幹男性名詞)「感覚、精神、理性」13という同義語を持つ。両語は、北欧神話の主神オーディンに 付き従う一対のワタリガラスであるフギン(Huginn)とムニン(Muninn)の語源になっている(末尾の-innは指小辞か名詞・形容詞形成接尾辞)。
1 "Regesta sive Rerum Boicarum Autographa e Regni Scriniis fideliter in Summas contracta. vol.8 part.4" (1839)p.401
2 Reichardt(1982)p.104
3 Das Königliche Staatsarchiv in Stuttgart "Wirtembergisches Urkundenbuch. vol.5"(1889)p.95-96
4 ibid. p.339
5 Landesarchivdirektion Baden-Württemberg "Das Land Baden-Württemberg: Regierungsbezirk Stuttgart, Regionalverband Mittlerer Neckar."(1978)p.417
6 Landesarchivdirektion Baden-Württemberg "Das Land Baden-Württemberg: Regierungsbezirk Freiburg."(1982)p.975
7 "Untersuchungen zur Deutschen Staats- und Rechtsgeschichte. vol.57"(1899)p.455
8 Naumann(2004)p.89
9 Köbler idgW M項p.46 この語は、古ザクセン、古高独、フランク、ランゴバルト等のドイツ諸語では人名要素を除いて用例を欠く。
10 Förstemann(1966)sp.137-138
11 Köbler ahdW M項p.91
12 -ing(en)地名は第一要素に人名が来る。ある一族の所有地や居住地を示す為に作られる地名で、その人名は一族の家長・族長の名である。 但し、現在の語形で-ing(en)の形に定着している地名でも、本来の-ing(en)地名では無い場合がある。例えば、刃物生産地で有名なノルトライン= ヴェストファーレン州の都市ゾーリンゲン(Solingen)は古高独solunga「湿地」に由来し、別の系統である。
13 Köbler ahdW H項p.116

執筆記録:
2011年12月1日  初稿アップ
PIE語根Mün-ch-ing-er:1.*men-1「考える」;2.*-ko- 形容詞・名詞形成接尾辞;3. *-ko- 形容詞・名詞形成接尾辞;4.語根不詳

戻る

Copyright(C)2010~ Malpicos, All rights reserved.