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Mičúrin ミチューリン(露)(Мичу́рин(英転写Michurin))
概要
露≪ヴャートカ方言≫mičura「無愛想な人、不平屋、寡黙な人」に由来する渾名ミチューラ(Mičura:1430年初出)に遡り、 「不平屋の息子、黙り屋の息子」の意。
詳細
Andrej Ivanovič Nekljud Mičurin (Андрей Иванович Неклюд Мичурин)(1510年Bežeck)1
Jelman Fedorovič Mičurin (Елман Федорович Мичурин)(1551年)2
Pustilo Hečaev Mičurin (Пустило Нечаев Мичурин)(1570年Bežeck)3

ニックネーム姓。露≪ヴャートカ方言≫mičura(мичура)「無愛想な人、口数の少ない人、不平屋」4(←?。語源不明) に由来する渾名ミチューラ(Mičura)に、所有形容詞接尾辞-inが後続して生じた姓。渾名ミチューラは世襲領地所有者のドミートリィ ・ミチューラ(Dmitrij Mičura(Дмитрий Мичура))という人物の名として、1430年ウグリチ(Úglič)5にて初出 1。更に、1495年ノヴゴロドの農民の名前としてMičuraの記録が有る1, 6。また、Mičjuraの 語形でも1634年に記録がある(Ивашка Мичюра)6。この説を初めて提唱したのは、ロシアの民俗学者 ヴェセロフスキー(Aleksándr Nikolájevič Veselóvskij:1838~1906)であるようだ。以降、ニコノフやガンジナ、フェドスュクもこの説に従っている。この説が 音韻的にも文法的にも最も妥当な提案である。

他には、ウンベガウン(Boris Ottokar Unbegaun)が提唱した男名ドミートリィ(Dmítrij)から生じたとする説7も存在するが、 ニコノフが指摘する様にDmítrijからMičuraへの変化の過程の証拠が確認されておらず、また音変化の説明も困難である為、疑わしい。

他の注目すべき説としてはタタール語(テュルク諸語の一)に由来するというバスカコフの解釈がある。それによれば、タタール語のbaj čuraという 複合語から派生したタタール姓バイチューラ(Bajčúra(Байчу́ра))にロシア語の父称接尾辞が付随してバイチューリン(Bajčúrin (Байчу́рин))姓が派生、更にロシア語化してバチューリン(Bačúrin(Бачу́рин))、ビチューリン(Bičúra(Бичу́ра))姓に添加し、 最終的に語頭子音[b]が鼻音化して[m]に転じミチューリン姓が生まれたと説明される8, 9。baj čuraはテュルク語の baj「金持ち、主人」8, 10とčura(čora, cura, suraとも)「英雄の息子、公の少年親兵隊員、親衛隊隊員、盟友、英雄の 戦友」8, 11に由来する。
[Fedosyuk(2004)p.134,Nikonov(1993)p.73,Ganzhina(2001)p.159,Veselovskij(1974)p.200,Baskakov(1979)p.229,Unbegaun(1972)p.93, Vedina(2008)p.136,ONC(2002)p.174]
1 Veselovskij(1974)p.200
2 ibid. p.108
3 ibid. p.262
4 Nikonov(1993)p.73、V. Jagic "Archiv für slavische Philologie. vol.34"(1965)p.352 後者では、 ドイツ語で"Griesgram, Brummbär, Wortkarger"「気難し家、不平屋、無口な奴」の語義の説明がある。元々、この単語はロシアの言語学者・ 民俗学者ダーリ(Vladímir Ivánovič Dal')が採取したものらしく、彼が編纂した辞書に録されているとの事。
5 ロシア、ヤロスラーヴリ州中西部、ヴォルガ河畔の都市。
6 Tupikov(2005)p.276
7 Unbegaun(1972)p.93 この説は以降、ヴェヂナ(Vedina(2007)p.136)、ONC(2002)p.174等も採用している。
8 Академия наук СССР "Советская тюркология."(1979)p.25
9 Baskakov(1979)p.229、Nikonov(1993)p.73
10 http://tr.wiktionary.org/wiki/bay、Ganzhina(2001)p.44
11 Ganzhina(2001)p.44、Baskakov(1979)p.229 語義はロシア語で"сын богатыря, княжеский отрок, дружинник, соратник, сподвижник богатыря"とある。この単語は今の所、 確認が取れない。苗字本・苗字サイトの説明内には現れるが、テュルク語の 辞書に見えない。テュルク語の姓の専門家であるバスカコフが指摘しているので、根拠が有るはずなのだが(私の力不足だろう、見つけられない)。 私の勝手な妄想だが、セルボ=クロアティアcȕra「女の子(の友達)(girl(friend))」(http://en.wiktionary.org/wiki/cura)は、このテュルク語からの 借用に見える。

執筆記録:
2011年11月13日  初稿アップ
PIE語根Mičúr-in:1.語根不詳;2.*-no- 形容詞・名詞形成接尾辞

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