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Huntelaar フンテラール(蘭)
概要
ドイツ北西部の小地名ヒュンテル(Hüntel)に由来すると思われる。地名の原義は「狩場の森」かもしれないが、良く判らない。
詳細
Gerd to Huntelo(1445年)1
Johann to Huntelo(1460年)2
Wolter to Huntel(1490-1545年)3
Gesa uxor Jois zu Huntelen(1636年Meppen(独ニーダーザクセン州))4

地名姓。オランダのサッカー選手ディルク・クラース・ヤン・フンテラール(Dirk Klaas-Jan Huntelaar:1983.8.12 Voor-Drempt(ヘルダーラント 州)~)の姓。オランダ中部に多い姓である。苗字本・サイトに未載の姓。私の考えでは恐らく、ドイツ北西部ニーダーザクセン州最西端エムスラント(Emsland)郡の都市メッペン (Meppen)市内北部の地名ヒュンテル(Hüntel)に由来する。語尾-aarはラテン語の動作主派生名詞形成接尾辞-āri(us)より生じた接尾辞で、 オランダは地名に接続して「~の出身者」を表す。ドイツにも、ノルトライン=ヴェストファーレン州北端地域に同語源のヒュンテラー(Hünteler) 姓が集住している。地名ヒュンテルの所在地はオランダとの国境に近く、東に12㎞離れているだけである。以下に地名の歴史上の変遷を 列挙する。

a quodam Hroðheri danſ ei in Huntalae xii p. In Thorpun xx p. ...(10世紀)5, 6, 7
Hunteloh(1497年)8
Huntele(1606年)9
meter van Wehselus zur Hunteler Vehr(1659年)4

あまりこの地名は研究が進んでいないらしい。古形を渉猟して見つけられたのは、姓の古形も含めた上掲のみ。第二要素は古ザクセン *lā,*lōh「灌木林、森、(特に生垣で囲われた)神域の森」10(=古高独lōh→独Loh)に由来しているのは明らかだが、 前半要素の由来は良く判らない。バーローは相変わらず「湿地、濁った川」の意だとし、ヴェーザー川の支流フンテ川(die Hunte)との関係を 想定する。河川名はまだしも「湿地」の意味は根拠が無いため、到底受け入れられそうに無い。

もしかしたら、古ザクセンhund「犬」11(=英hound,独Hund「犬」)に由来しているかもしれない(マルピコス説)。その 場合、初出形のHuntalaeの後ろから二番目の音節に有る-a-は、古ザクセンhundの複数属格形hundaの屈折語尾であるかもしれない。問題は hundの語末子音が無声音[t]に転じ得るか?、だ。この音変化は高地ドイツ語圏では有り得るが12、北部のドイツ 語圏では今の所私の知る限りでは確認できない為、やはり説得力に欠けていると言わざるを得ない。上掲の通り、古い綴りに一度も-d-が現れない ので、説得力に欠ける。

そこで、もう一つ古英hunta「猟師、蜘蛛」13と関係付ける説を提案したい。この語は現代英語の動詞hunt「狩る」と 同根だが、問題もある。英語以外のゲルマン系諸言語にこれらの英単語と確実に同根といえる語彙が確認されていない点だ 14。然し、これらは古英hentan「掴む」,ゴートfra-hinþan「掴む」,hunþs「戦利品」,スウェーデンhinna「届く」(いずれも 印欧祖語には遡る事ができず、語源不明)との関係が有力視されている14。また古ザクセン人はブリテン島に渡った サクソン人と元々同じ氏族である事から、文献上に記録に残らなかっただけで、*hunt-「狩」を意味する語彙を持っていた可能性は十分有り得ると 思う。そんな訳で今の所、「狩場の森」の原義とする私の解釈を挙げておく15
1 http://www.uijtterlinde.eu/getperson.php?personID=I66421&tree=19430103
2 http://www.uijtterlinde.eu/getperson.php?personID=I334667&tree=194503011965
3 http://www.uijtterlinde.eu/getperson.php?personID=I334019&tree=194503011965
4 http://home.kpn.nl/ton.reuvers/jmc_reuvers-frm3.htm
5 Kirstin Casemir, Uwe Ohainski "Niedersächsische Orte bis zum Ende des ersten Jahrtausends in schriftlichen Quellen."(1995)p.39
6 Wilh. Crecelius "Saxonicorum et frisiorum scientiam spectantes. vol.1"(1864)p.21
7 http://www.wulfila.be/tw/query/?lemma=7909
8 http://www.xn--hntel-kva.de/geschichte.html
9 http://groups.yahoo.com/group/groningen-genealogy/message/9170
10 Köbler asW L項p.41
11 Köbler asW H項p.117
12 この音変化は中部フランケン方言などの中部ドイツ語にも現れる。一例を挙げる。 バイエルン州北部ウンターフランケン地方バート・キッシンゲン(Bad Kissingen)郡ハメルブルク(Hammelburg)に存する 小地名フンツフェルト(Hundsfeld:原義「犬野」)の初出はHuntesfeld(803年)(Oesterley(1883)p.309)で、d→tの音変化が見られる。
13 Köbler aeW H項p.74
14 英語語源辞典p.675
15 なお、この場合の二要素間(初出形:Hunt-a-lae)に見える-a-の正体は何であろうか。ここからは、もう完全に私独自の勝手な 考えになってしまうが、ゲルマン*χunt-「狩」という語根に抽象名詞・集合名詞形成接尾辞*-ō(←PIE*-ā←*-eh₂)が接続したゲルマン 祖語のō語幹名詞*χuntō「狩」から生じた古ザクセン*hunta「狩」(単数属格形も同形)の語末母音に由来するんじゃないかと思った。ゲルマン*χuntō以降の 単語は私のデッチ上げだが・・・。

執筆記録:
2012年7月5日  初稿アップ
PIE語根Hunte-l-aar:1.語源不明;2.*leuk-「光」;3.語根不詳

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