Galstyan ガルスチャン(アルメニア)
概要
アルメニアHogegalust(Հոգեգալուստ)「聖霊降臨節」の短縮形に由来する男名ガルスト(Galust(Գալուստ))を語源とする。
詳細
父称姓。ロシアの柔道選手アルセン・ジョライェヴィッチ・ガルスチャン(Arsen Žorajevič Galstjan(英Arsen Zhorayevich Galstyan、露Арсен Жораевич Галстян、アルメニアԱրսեն Ժիրայրի Գալստյանը):1989.2.19 Nerk’in Karmiraġbjur(Ներքին Կարմիրաղբյուր)(アルメニア、タヴシュ地方)~) の姓。同源異綴の姓にガルスチャン(Galustyan(Գալուստյանը))がある。いずれもアルメニア語東部方言系の苗字で、対してカルスチャン (K'alustyan(Քալուստյանը))姓はその西部方言形に相当する。

アルメニア人の男子名ガルスト(Galust(Գալուստ))1に、イラン系言語の複数属格語尾に由来する家族名形成接尾辞-yanが 接続して生じた姓で、「ガルストの一族」を意味する。この男子名はアルメニアHogegalust(Հոգեգալուստ)「聖霊降臨節、五旬祭、ペンテコステ (復活祭後の第七日曜。精霊が使徒に降臨したことを祝う)」の短縮形に由来する1。アルメニアHogegalustは古アルメニア hogi(հոգի)「霊魂、精霊、幽霊」2(←PIE*pow-yo-(o階梯+形容詞・名詞形成接尾辞)←*peu-「吹く、息をする(to blow, to breathe)」)と古アルメニアgalust(գալուստ)「到着、接近」3の合成語に由来し、文字通り「精霊の到来」を意味する。 恐らく、この時期に生まれた子供に対して付けられたのを起源とするもではないかと思う。

ちなみに、イギリスの有名な詩人ウィリアム・ワーズワース(William Wordsworth)の姓の第一要素Words-は元々、古期英語のWadeという男子名の 属格形に由来するが、人名Wadeは古英wadan「行く」(>英wade「歩いて渡る」)を語源とし、更に印欧祖語の動詞語根*wā-「行く」に遡る。 古アルメニアgalust「到着、接近」も*wā-「行く」に遡る同根語であり、ワーズワース姓とガルスチャン姓は語源上関係が有るのだった。
◆古アルメニアgalust←gal(գալ)「来る」(+-st(-ստ)名詞形成接尾辞←PIE*-st-(古教会スラヴ-ostĭ,ヒッタイト-ašti))(-lは不定詞形成接尾辞) ←PIE*wā-「行く」(ラvādāre「行く」,古英wadan「行く」,ヒッタイトwā,wē「行く」)4。ラvādāreとゲルマン語対応形(他に古高独watan「歩いて渡る」, 古ノルドvaða「歩いて渡る」等)は語根に拡張子が付いた拡張形*wadʰ-に由来すると説明される。PIE*w-がアルメニアg-に転じるのは 正則(例:PIE*wekʷsperos「夕方」→古アルメニアgišer(գիշեր)「夜、闇」=ギhésperos「夕方」,ラvesper「夕方」)。
1 http://en.wiktionary.org/wiki/%D4%B3%D5%A1%D5%AC%D5%B8%D6%82%D5%BD%D5%BF
2 Bedrosian(1879)p.412
3 Bedrosian(1879)p.109
4 Pokorny(1959)p.1109、Ačaṙean(1926)p.500、http://en.wiktionary.org/wiki/%D5%A3%D5%A1%D5%B4#Old_Armenian
http://en.wiktionary.org/wiki/%D5%A3%D5%A1%D5%B4#Armenian
執筆記録:
2012年8月5日  初稿アップ
PIE語根Ga-l-st-yan: 1.*wā-「行く」;2.未調査; 3.*-st- 名詞形成接尾辞; 4.*-e/on- n語幹形成接尾辞

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