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Braithwaite ブレイスウェイト
概要
「広い開墾地」を意味する。
詳細
Reginald de Braidewad(1185年York)1
Geoffrey de Braitweyt(1273年York)2
Adam de Braythwayt(1301年Yorkshire)1
Alan de Braithethwait(1284~1327年頃York市:自由民)2
Peter Braytwayt(1364年Yorlshire)1

地名姓。カンブリア、ノース=ヨークシャー、ランカシャー各州に多い。中でも、ランカスター(Lancaster)に特に多し。 第一要素は古ノルドbreiðr「広い」3(英broadと同語源)。第二要素は古ノルドþveitr「打撃、切開」 4で、地名要素としては「開墾地」の意で用いられる。英語語源辞典p.1611には、古ノルド þveit「土地の一角、牧草地、開墾地」の語も見えるが、同語源である。いずれにしても、「広い開墾地、広墾(ヒロハル)」を意味する 以下の同名の地名より。

●(英国北西部/カンブリア州/アラーデイル(Allerdale)州自治区/上ダーウェント(Above Derwent)行政教区/ブレシット (Braithwaite)村)
Braithait(1160年頃年)5
Braythwayt(年)5
Braithwaite/Braithweit/Braitwhayt/Braythethwayt((1286年))5
Braytwhat(e)(1563/1566/1569年)5

●(英国ヨークシャー=ハンバー地方/サウスヨークシャー州/ドンカスター(Doncaster)大都市区/カーク=ブラムウィズ (Kirk Bramwith)行政教区/カーク=ブラムウィズ村)
Braytweyt(1276年)6
Braithueyt/Braythueyt/Braithuayt/Braythuayt/Braithwait(e)/Braythwait(e) (1281/1327/1383~1822年)6
Braitewaite(1422年)6
Brathwayte(1538年)6
Brayffeith(1549年)6
Brafit(1681/1843年)6

●(英国北西部/カンブリア州/イーデン(Eden)州自治区/アイヴギル(Ivegill)村)
Braythweyt(1285年)7
Bratheweyt(1292年)7
Braithwait in Inglewod forest(1350年)7
Braithat(1580年)7
Brathuate magna, parua(1541年)7
Brathait(1580年)7

●(英国ヨークシャー=ハンバー地方/ウェストヨークシャー州/ブラッドフォード(Bradford)大都市区/キースリィ (Keighley)行政教区/キースリィ市)

この他にも、数箇所同名の地名が有る。地名の語源は明らかなので、古形も含めて割愛します(筆者の根気が続かない…)。 尚、ハリソンは上掲説以外に第一要素を古ノルドbrá「眉毛、睫毛、川の土手」(>英≪スコットランド方言≫brae「岡の中腹、 坂、斜面、土手」)とする説も提示している。然し、古ノルドbráの母音はaの長音で、その借入語の英braeも15世紀までは [bræ:]、16~18世紀には[brɛ:]→[bre:]と発音していたと考えられ、上掲地名の古形が二重母音で現れている事実と符合 しない。姓の古形欄に記載したBraithethwaitという形からも判断出来るが、同音重複を避けて-th-の一方が消失した (ハプロロジー)とみるのが妥当で、やはり第一要素は古ノルドbreiðr「広い」から来ていると見るべきだろう。
尚、この地名の発音だが、ダーウェントのBraithwaiteに関しては英Wikipediaに/ˈbrɛθɪt/8、 アイヴギル村のBraithwaiteに関してはEPNSに[brɛˈθət]7とあり、/ブレスィット/の様に発音する (後者の発音表記のアクセント位置は米国方式のものとみられ、第一音節にアクセントが有るのを表していると思われる。 曖昧母音にアクセントが有るのは不自然であろう)。また、カーク=ブラムウィズ村のBraithwaiteの古形にBrayffeith(1549年) 等の綴りが、無声歯摩擦音[θ]が無声唇歯摩擦音[f]と発音された事実が有る事を示しているとしたら、ロンドンのコックニー と全く同じ現象が生じていた事になる。Betty Braithwaiteという『ハリー・ポッター』の登場人物は、どうも 邦訳されていない外伝に登場するらしく、日本語でどの様に音転写して良いのか判らないし、英国でもどう発音しているのか 私は知らない。一先ず、ガイアナ出身の小説家エドワード・R・ブレイスウェイト(Edward Ricardo Braithwaite)の姓の 音転写に従い、"ブレイスウェイト"としておく。
[Reaney(1995)p.,Harrison(1912-1918)p.46,Bardsley(1901)p.128,Brown(1967)p.36,Lower(1860)p.88,ONC(2002)p.88]
◆古ノルドþveitr「打撃、切開」←ゲルマン*þweitaz(a語幹男性名詞)「打撃(?)」(筆者まるぴこすによる再建形)←PIE*tweid- (拡張形)←*twei-「掻き乱す、振る」(ギseíein「振る」(>英seismic「地震の」),古英þwītan「切る」 ,サンスクリットtvi-「興奮している」,アヴェスタθwyant-≪分詞≫「恐怖心を掻き立てる」) 9。ケーブラーは祖語に2つの*twei-を設け、「打つ、殴る(hauen, schlagen)」と、「興奮させる、 動かす、振る(erregen, bewegen, schütteln)」に分けるが、筆者はワトキンズ(Calvert Watkins)と英語語源辞典の立場に 従って、両者を一つの語根とした。あまり広い対応を持つ語根ではなく、ゲルマン語派内でも上掲語(とその派生語)しか 同根の単語が見出せない(英語と北ゲルマン語のみ)。ミタンニの王トゥシュラッタ(Tušratta)はサンスクリットtveṣá-ratha- 「猛進する戦車(dessen Wagen boisterous vordringt)」に相当する名前と考えられており10、 この名前の第一要素は当語根に遡る(但し異説も存在する)。
1 Reaney(1995)p.60
2 Bardsley(1901)p.128
3 英語語源辞典p.163
4 Köbler anW Th項p.16
5 Dickins(1952)p.369
6 EPNS vol.30 p.30
7 EPNS vol.20 p.225
8 http://en.wikipedia.org/wiki/Braithwaite
9 英語語源辞典p.1244,p.1563、Watkins(2000)p.94、Pokorny(1959)p.1099、Buck(1949)p.675、 Köbler idgW T項p.54
10 Pokorny(1959)p.1099、風間(1993)p.168-170
執筆記録:
20年2月12日  初稿アップ
PIE語根Braith-waite:1.語根不詳;2.*twei-「掻き乱す、振る」

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