戻る/ はじめに/ 苗字苑本館/ ハリポタ語源辞典/ 銀英伝語源辞典/ 付録/ リンク集
苗字リストに戻る
Bradley ブラッドリー
概要
①「広畑、広い開墾地」「Brada(人名:広(ヒロシ))の開墾地」を意味する英国に複数ある同名の地名より。
②地名姓。「板森」を意味する。
③父称姓。「Brollachán(人名:brollach「胸」の指小形より)の息子」の意。
詳細
William de Bradelai(1170年Lincolnshire)1
Warino de Bradelega(1230年Shropshire)2
Henrico de Bradelei(1260年Northumberland)3
Robert Bradelei(1298年Staffordshire)4

①地名姓。古英brād「広い」(>英broad)+古英lēa(h)「草地、耕地、開墾地」(>英lea,ley)よりなる同名のブラッドリー(Bradley)という地名に 由来する。この地名はイングランドに腐るほどあり(著名なものだけでも約10件在る)、また語源も明確なので地名の詳細は割愛する。 また、ウィルトシャーのBradleyの古形Bradanleage(978年)5が示すように、古い綴りの第一要素が弱変化名詞の属格形が 現れている場合は、古英brād「広い」を語源とする古期英語の男子名ブラーダ(Brada)6に由来している。その場合は、「 Brada(人名:「広(ヒロシ)」の意)の開墾地」の意。
なお、スコットランド、ロックスバーグシャー(Roxburghshire)に有る地名Braidlieに因む場合もあるが、この地名の古い綴りが 確認できない為、詳しい語源は不明。
[Reaney(1995)p.60,Harrison(1912-1918)p.45,Lower(1860)p.101,Bardsley(1901)p.127,Black(1946)p.96,苅部(2011)p.37,ONC(2002)p.88]
Will'o de Bredleye(1327年Uttoxeter(スタッフォードシャー))7

②地名姓。イングランド中部スタッフォードシャー州にある同名の都市に由来する。地名の初出はBretlei(1086年) 8
で、古英bred「板」9(独Brett「板」は同語源)+古英lēa(h)「草地、 耕地、開墾地、森」(>英lea,ley)よりなり、「板を採取する森、板森」を意味する地名である。
[ONC(2002)p.88]
③父称姓。スコットランド・ゲール姓Ó Brolcháin8、アイルランド姓Ó Brollacháin(O Brallaghan) 10、Ó Broileacháin11に 由来する。この姓は英語式転写で、(O')Brollaghan、O'Brallaghan、O'Brellighan、O'Brilleghane、O'Brilehan等様々に 綴られた。Bradleyは、その中でもかなり理不尽な英語式転写で、既存の英語姓に適用させたものである。 原義は「Brollachán(人名)の息子」。個人名Brollachánはアイルランドbrollach,broilleach「胸、乳房」12 に指小辞-ánが付随して生じた名前と考えられている。
[MacLysaght(1999)p.24,Black(1946)p.96,ONC(2002)p.88]
◆古英bred「板」←ゲルマン*breðam(a語幹中性名詞)「板、机」(古ザクセンbred「板」,中低独,古高独bret「板」,中高独brët「板」)(音位転換) ←PIE*bherdh-「切る」(サンスクリットbardhaka-ḥ「切ること、大工」,英board「板」,露bërdo「筬(オサ:織機の付属用具の一)」)13。 ポコルニーは語根を*bheredh-に作る。
◆古アイルランドbrollach「胸、乳房」(nがlに同化)←*bron-lach←*bron-「胸」←ケルト*brunnjā-(ā語幹名詞(男性か女性かは不明))「胸」((古)アイルランド bruinne「胸」,古ウェールズbronn,ウェールズbron「胸、乳房」,ブルトンbronn「乳房」)(sがnに同化)←*brusnjā-←PIE*bhrus-njā- (ゼロ階梯+接尾辞(内、末尾の-ā-は男性・女性名詞形成接尾辞PIE*eH2)に遡る?。-nj-は それぞれ形容詞形成接尾辞の*-n(o)-と*-i-かも)←*bhreus-「膨らむ」(古アイルランドbrū(属格bronn)「腹、体、乳房」,古英brēost「胸、乳房」 (>英breast),露brjúcho「腹」,アルバニアbrinjë「肋骨、脇」)14(cf.ブリュンヒルト (Brünnhild)。*bron-lach-の同化による異形に由来すると見る解釈は、マクベイン による。ポコルニーは別見解で、語根のゼロ階梯に指小辞が接続したPIE*bhrus-lo-に派生接尾辞(formant)*-āko-が付随したものと する。*-āko-は所属を表す形容詞・名詞を派生する機能がある(cf.ディズニー(Disney))。-sl-という子音クラスターが同化により -ll-となったと見られる。スラヴ語起源のドイツ姓ブラウヒッチ(Brauchitsch)と語源上関連。
一方、ケルト*brondjo-,*brondā「胸」15を立て、スラヴ*grǫdĭ「胸」(露grud'「胸、乳房」,チェコhrud'「胸」,古ポーランドgrędzi「胸」, 古教会スラヴgrudĭ「胸」 etc.)16と関連させる解釈も提案されている15。このスラヴ語はポコルニーやチェルヌイフによれば、 PIE*gʷrendh-「膨らむ;胸」(ギbrénphos「誇り」,ラgrandis「大きな、成長した、大量の」)に遡るとしている17。然し、この語根は 上記の如く確実な対応がギリシア、イタリック、スラヴの三語派しかなく、しかも各語の意味の乖離も甚だしいので、祖語を想定する には難がある。現に英語語源辞典のgrand項(p.588)では、ラgrandisの語源を不明としている。確かに語頭でPIE*gʷ+母音の場合、*gʷは アイルランド語ではbに転じるが、子音が後続する場合で同じ様な事が起きるかどうかは不確かで、この説は胡散臭い。
1 Reaney(1995)p.60
2 Robert William Eyton "Antiquities of Shropshire."vol.4(1857)p.44
3 Charles Henry Hartshorne "Memoirs Chiefly Illustrative of the History and Antiquities of Northumberland."(1858)p.113
4 George Wrottesley,George Thomas Orlando Bridgeman "Collections for a history of Staffordshire."vol.4(1883)p.43
5 Thomas Warton "Specimen of a history of Oxfordshire."(1783)p.57
6 Searle(1969)p.113
7 William Salt Archaeological Society "Collections for a history of Staffordshire."vol.7(1886)p.220
8 ONC(2002)p.88
9 Köbler aeW B項p.58
10 E. R. Seary,Sheila M. P. Lynch,W. J. Kirwin "Family names of the island of Newfoundland."(1998)p.51
11 http://www.libraryireland.com/names/ob/o-brolchain.php
12 Macleod(1831)p.91
13 Pokorny(1959)p.138、英語語源辞典p.137、Köbler idgW Bh項p.45
14 http://www.spns.org.uk/bliton/bronn.html、MacBain(1855-1907)p.54、英語語源辞典p.157,p.181、 Pokorny(1959)p.170-171
15 Whitley Stokes,Adalbert Bezzenberger "Wortschatz der keltischen Spracheinheit."vol.2(1979)p.184
16 Buck(1949)p.247-248、Chernykh(1994)p.222
17 Chernykh(1994)p.222、Pokorny(1959)p.485

執筆記録:
2011年6月6日  初稿アップ
PIE語根①Brad-ley:1.語根不詳;2.*leuk-「光、明るさ」
②Brad-ley:1.*bherdh-「切る」;2.*leuk-「光、明るさ」
③Blad-l-ey:1.*bhreus-1「膨らむ」;2.*-lo-指小辞;3.*-eH2名詞形成語尾

戻る

Copyright(C)2010~ Malpicos, All rights reserved.