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Bonham ボナム
概要
①「良い人」を意味するフランス語に由来。
②語源不明のウィルトシャーの同名の地名より。
詳細
分布はノーサンプトンシャー州、ハートフォードシャー州に多い。以下の二つのルーツがあるが、現在の分布から①に由来か。

Randulfus bonus homo(1148年Hampshire)1
Nigel Bonhume(1247年Bedfordshire)1
Symon Bonhũme(1256年Nottingham)2
Agnes relicta Bonhomme(1273年Oxfordshire)3
Anketin Bonhom(1273年Cambridgeshire)3

①ニックネーム姓、父称姓。古仏bon homme,bonhom(m)e「良い人」1, 4に由来する。又、これに 由来する古いイングランドの個人名のBonus homo5(中世ラテン語形)、Bonhom(1177年レスターシャー 州)1に由来する。或いは、この語句は後に「農夫」の意味も生じたので、その意の姓。cf.ベルチャー (Belcher)、シュムーデ(Schmude②)、メランヒトン(Melanchton)、モンゴメリ(Montgomery)
[Reaney(1995)p.53,Harrison(1912-1918)p.40,Lower(1860)p.,Bardsley(1901)p.117,ONC(2002)p.79]
William de Bonham(1225年Somerset)1
Thomas de Bonham(1253年Bruton(Somerset州))6
Maurice de Bonham(1273年Somerset)3
Johannes de Bonham(1322年Wiltshire)7
Nicholaus (de) Bonham(1355~1383年Wiltshire:兵士、議会議員)8
Richard Bonham(1597年Oxfordshire)3

②地名姓。ONCやリーニー、バーズリー等は所在不明の喪失地名に由来するとしているが、イングランド南部ウィルトシャー州南西部、 ミア(Mere)行政教区ストートン(Stourton)村にある同名の小地名に由来する地名姓であることは、上掲の古い姓の記録地からも 明らかである。英国地名学会出版のウィルトシャー州の地名辞典のボナム(Bonham)項の欄を見ると、この地名は古くからBonham (1356/1435年)9と綴られていた事が判る(人名としては、上述の通り13世紀前半に初出)。本来は家屋の名前で、16世紀の 英国の詩人ジョン・リーランド(John Le(y)land:1503(或いは1506)~1552)の記述に見える。以下に引用する。

"There is an an Hille, a litle withoute Stourton a Grove, and yn it is a very praty place caullyd Bonhomes, buildid of late by my Lorde Stourton. Bonhome of Wileshire of the auncienter House of the Bonehomes there is Lords of it."(Hoare 89)10
「ストートンから少し離れた丘の上に森があり、その中に我がストートンの領主が後に建てたBonhomesと呼ばれるとても綺麗な 場所がある。...」(マルピコス仮訳:後半は良く判らない)11

ONCは疑問としながらも、「Buna(人名)の家屋敷(古英hām)」を原義とする説を提案している12。 ブナ(Buna)13という男名の由来は明らかでないが、古英bune「コップ、杯」14 、或いは古英bune「蘆(アシ)、葦(ヨシ)」14と関連か。然し、男名に由来する 地名である事を証明するには、地名の古形の第一要素に属格語尾が現れている事を指摘出来なければならない。然し、この地名の 古形にはそれが全く現れておらず、論証できない。前述の地名辞典が、地名の形が最近のものしか残っていない為、十分な語源 遡及が出来ないと言っている様に、語源不明とするほか無い。
[Reaney(1995)p.53,Bardsley(1901)p.117,ONC(2002)p.79]
◆仏homme「人、男」←古仏homme(同化)←omne←ラhominem(単数対格形)←homō「人、男」(語幹homin-)(プロヴァンスòme,伊uomo,シチリアomu, 西hombre,葡homem,ルーマニアom)←古ラhemō(語幹hemon-)←PIE*(dh)ghom-on-「人(earthling)」(o階梯+接尾辞)←*dhghem-「大地」 15。語根から古ラまでの経緯はワトキンズより。彼によれば、PIEの位格(locative case)の形 *dhgh(e)mon「大地の上に」が名詞化し*dhgh(e)mōn「大地の上にいるもの、人」になったとする(これは古ラhemōの形を基にした 解釈)。
ウィクショナリーは別の見解を採っている。PIEdʰǵʰmon-に由来すると見ている。 これは語根のゼロ階梯に名詞・形容詞形成接尾辞*-men-が付随したとする解釈(この接尾辞はラcarmen「歌」,flūmen「川」,ligāmen「紐」 等に現れている)。この場合有史以前にPIEdʰǵʰmon-から*hemmōに転じた形の二重子音が単子音に 転じたことになる。
1 Reaney(1995)p.53
2 "Excerpta È Rotulis Finium in Turri Londinensi Asservatis, Henrico Tertio Rege, a.D. 1216-1272."(1836)p.223
3 Bardsley(1901)p.117
4 Harrison(1912-1918)p.40
5 Searle(1969)p.111
6 "Two cartularies of the Augustinian priory of Bruton and the Cluniac priory of Montacute in the county of Somerset."(1894)p.8
7 "Parliaments of England.vol.1(1213-1702)"(1878)p.68
8 ibed. p.190、p.158、p.219 etc.
9 EPNS vol.16(1939)p.181
10 John Leland,Thomas Hearne "The itinerary of John Leland the antiquary."vol.7(1744)p.100
11 訳はかなり適当。"of late"はそのまま直訳で「後から」にした(本当に正しいかは良く判らない)。
12 ONC(2002)p.79
13 Searle(1969)p.120
14 Köbler aeW B項p.68
15 英語語源辞典p.662-663、Watkins(2000)p.20、Pokorny(1959)p.414、http://en.wiktionary.org/ wiki/homo#Latin

執筆記録:
2011年6月6日  初稿アップ
PIE語根①Bo-n-ham:1.*deu-2「行う、良く見せる、尊敬する」;2.*-en- 名詞・形容詞形成語尾;3.*dhghem-「大地」 ②Bon-ha-m:1.語根不詳;2.*(t)kei-「定住する、住む」;3.*-mo-形容詞形成語尾

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