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Baruffio バルッフィオ(伊)
概要
①「激しい口論」を意味する渾名バルッファ(Baruffa)に由来する。
②古高独の男名ベルルフ(Berulf:「熊」+「狼」の意)に由来。
詳細
ロンバルディア州西部モルタラ(Mortara)近隣に見られる姓。 ロンバルディア州とエミーリア=ロマーニャ州に多いバルッファ(Baruffa)、バルッフォ(Baruffo)、バルッフィ(Baruffi)姓と 語源上関係があろう。Baruffioは、これらの姓の中でもラテン語の形容詞形表記バルッフィウス(Baruffius)を起源に持つ 姓である。語源は以下の2説がある。いずれも有り得る解釈であるが、①説を採用している者が多い。

Jacobus Baruffius(1310年Milano)1
Giovanni Baruffi(16世紀Caravaggio(ミラノ東部近郊))2
Don Carlo Baruffi(1680~1710年頃Basiglio(ミラノ南部近郊))2
Ioannes Antonius Baruffius(1717年Ferrara(エミーリア=ロマーニャ州))3

①ニックネーム姓。伊baruffa「激しい口論、罵り合い、乱闘」から生じた渾名 バルッファ(Baruffa)に由来しており、「罵り屋、すぐ口論を起こす人」を意味する。 伊baruffaはゲルマン語起源の言葉で、ランゴバルトbaraufen「殴りあう、摑み合いの喧嘩をする」 4に由来するとする説がある。この動詞は古高独biruofen「非難する」 5か古高独biroufen「引き抜く」5と同語源と思われる。 或いは古高独*bi(h)roffjan「(子供を)叱り付ける」5に由来する可能性も あり得る。イタリア語の各語源辞典ではbiroufen「引き抜く」との関係を指摘している(Bonomi(2004~2008)等)。
[Minervini(2005)p.81,Rossoni(2000)bare~項]
Vivianus filius Berulfi tabernarii(1219~1230年)6

②父称姓。古高独の男子名ベルルフ(Berulf)7に由来する。古高独bero「熊」+古高独wolf「狼」 よりなる。この男子名がランゴバルト人(ゲルマン人の一部族)によって北イタリアに 持ち込まれ、ベロルフォ(Berolfo:1046年Luccaの司教座聖堂参事会修道院総会(capitplo)の記録に見える) 8やベルルフォ(Berulfo)6という中世イタリア人男子名が発生し、 更に[l]が[f]に同化して-ff-の二重子音に変化して生じた姓と考えられる。同じ起源と見られる ベルッフィ(Beruffi)、バロッフィ(Baroffi)という2つの姓もロンバルディア州に特徴的。 同じ様な例として、古高独の男名Gerolf9より生じたイタリア姓Garolfi、Garuffi、 古高独の男名Farulf10より生じたイタリア姓Farolfi、Faruffiniが挙げられ、いずれも ロンバルディア州とエミーリア=ロマーニャ州といったイタリア北部に多い姓である。 又、古高独bar(o)「人、自由人」11に由来する個人名起源説もある。 この語に古高独wolf「狼」が後続した男名バロルフ(*Barolf)に由来している可能性もあるが、 この男名の使用記録は無いらしい(Förstemann(1966)に記載無し)。
これらの説に則るなら、*Berulfi、*Berolfi、*Barulfiといった姓が存在しても良いように思えるが、 実際にはその様な姓は現在のイタリアには無い。又、普通名詞のbaruffa「激しい口論」との連想が、 現行の姓Baruffi(o)の形に変化した原因であるかもしれない。
[Rossoni(2000)bare~項,www.cognomiitaliani.org/guest0/index.php?entry=2325]
◆伊baruffa「激しい口論、罵り合い」←古高独biroufen「引き抜く」←bi-接頭辞(←PIE*bhi(縮小形)←*ambhi 「~の周りに」)+roufen「むしり取る、かき乱す、虐待する」(>独raufen「むしり取る」)←ゲルマン*raufjan、*raubjan 「奪う、略奪する」(古英*ríefan「奪う」,古フリジアrêva「奪う」,古ノルドreyfa「破る、摘む、奪う」)←PIE*roup-yo- (О階梯+動詞形成接尾辞)←*reup-「ひったくる」(ラrumpere「破る、裂く」,英reave「略奪する」, リトアニアraupýti「掘る、刳り抜く」,セルボ=クロアティアrȕpa「穴」,サンスクリットrōpayati≪3・単・現≫「折り取る」) 12。古高独bi-から伊ba-の変化はラbirotum「二輪戦車」に由来する伊bar(r)òccio「荷馬車」と 伊≪文語≫biròccio,≪ヴェネチア方言≫birozzo「荷馬車」の関係と同じである。
1 Muratori(1741)p.649
2 Rossoni(2000)bare~項
3 Borsetti Ferranti Bolani& Baruffaldi(1735)p.499
4 http://www.paginebianche.it/execute.cgi?tipo=cognome&ver=lite&font=default&btt=1&ts=2&cb=8&l=it&cognome=baruffi
5 Köbler ahdW. B項p.76
6 Gaudenzi(1896)p.449
7 Förstemann(1966)p.146 このドイツ人男名はイタリアよりもフランスで 多く用いられたようで、この人名に因む地名がフランスに多く残っている。例:モンブロン(Montbron:Charente県) 地名初出de Monte Berulfi(1168年);ブリュヴィル(Bruville:Meurthe-et-Moselle県)地名初出Berulfi villa(886年); ブロヴィル(Brauville:Meuse県)地名初出Berulfi villa in pago Wabrenze(769年);ブリュクール(Brucourt:Calvados県) Berulfi curtisの古形が挙げられている(年代確認できず)。
8 Lucca、San Martino大聖堂"Regesto del capitolo di Lucca"vol.1(1910)p.79
9 Förstemann(1966)p.307
10 Förstemann(1966)p.263
11 Köbler ahdW. B項p.13、Gottschald(1982)p.100
12 英語語源辞典p.1156、Watkins(2000)p.72、Pokorny(1959)p.868、Köbler idgW R項p.28、 Bonomi(2004~2008)baruffa項

執筆記録:
2011年2月12日  初稿アップ
PIE語根①Ba-ruff-io:1.*ambhi「~の周りに」;2.*reup-「ひったくる」;3.*yo-形容詞形成接尾辞
②Bar-uff-io:1.*bher-3「明るい、茶色の」;2.*wk wo-「狼」;3.*yo-形容詞形成接尾辞

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