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Kastrop(p)、Castrop カストロプ
概要
地名姓。後半要素-trop(p)は「村」の意だが、前半要素の語源は不明。
詳細
Gerlaci de Castorpe(1336年Lübeck)1
Helmicus de Castorpe(1349年Dortmund)2
Johannes Castorp(1374年Lübeck)3
Gobeln Castorpe(1423年Dorpat)4

地名姓。ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州中部エネップ=ルール郡(Ennep-Ruhr Kreis)に多い。同州ミュンスター行政区域、 レクリングハウゼン(Recklinghausen)郡にある都市カストロプ=ラウクセル(Castrop-Rauxel:39Hb39)の名より。当市はカストロプと ラウクセルという町が合併して出来た町。地名の変遷は以下の通り。

villa Castorp in pago Botergo(834年)5
villa Castorpa in Pago Bortergo(9世紀)5
Castorp(1019年)5
superior Castthorpe(1150年:付近のObercastrop(廃村)に相当)5
parrochia Castorpe(1268年)5

初出形はヴェルデン(Werden)修道院の地産記録に見える。古形の第二要素-torpは古ザクセンthorp,tharp6, 中低独torp「村」7であるが、第一要素Cas(t)-の起源は明らかでない。

当市の公式HPには地名の語源に関して2つの説を挙げる8。一つ目は多くの研究者が指摘する説として、 例えばカール(Karl)の様な人名に由来していると解釈するもの。然し、上掲の通り地名の古形を見る限り、前半要素に-r-や-l-が存在した 形跡が無く、疑わしい。またある書籍では、古ザクセンgast「客人」に由来する個人名に因むとする説も挙げている9。 だが、第一要素が人名ならば属格で現れていないのは異常なので、この説明も無理がある。
二つ目は、古高独kasto「納屋、穀物庫、箱」10(>独Kasten「箱」)と関係付ける説。元この地は二本のローマ帝国の 道路が交差した場所にあり、そこにローマの軍隊駐屯地が置かれた。後この施設を行商人が、商品の保管庫として利用するようになったという。 又、シャルルマーニュ(カール大帝)は軍の北進の際、この街道を利用し街道を占拠、飛び飛びに兵糧支給所や基地を建設した。こういった 施設の保護下に発達した村落が、この町の起こりとされる。この地名はそういった歴史を反映したものとされ、兵糧庫に着目して命名 されたもので、原義は「穀物庫(近く)の村」とされる8。但し、ヴェストファーレンにある地名が古高地ドイツ語に 由来しているというのもおかしな話であり、古高独kastoに対応する古ザクセン語、中低地ドイツ語が存在しない点11、 上記の穀物庫の話が本当に史実なのかどうか不明な点から、鵜呑みにはし難い。

私も、古ザクセンkrasso,中低独kerse,karse「クレソン」12に由来するのではないかと、独自に考えてみた。 母音+-rsという環境で、-r-が脱落する例はドイツ北部方言で度々見られる現象である(例:姓Karspoell(1535年)>姓Kespohl)。然し、 この説明にも難が有り、地名の古い綴りの第一要素に-r-が有るのが一件も無く、人名Karl起源説と同じ理由で根拠が薄弱としか言い様が無い。 結局、全ての説明が決め手に欠ける。語源・由来を容易には突き止め難い地名である。

尚、上掲の姓の古形一覧に挙げた例や、リューベックの市長を務めたHinr. Castorp(1451年)13の様に 嘗てはリューベックでも見られた姓であるが、現在はこの地には分布していない。
[Gottschald(1982)p.283]
◆古高独kasto「納屋、穀物庫、箱」←ゲルマン*kasa-(古ノルドkass(i)「箱、籠」,ゴートkas「容器」)14。語源不明。 ケーブラーのゴート語辞典では、レーマン(Lehmann)の説を引いて、放浪語(Wanderwort)としている。英chest「箱」とは、語源的には無関係。 
1 "Codex diplomaticus Lubecensis. Lübeckisches Urkundenbuch. Urkundenbuch des Bisthums Lübecks." (1856)p.775
2 Dortmunder Urkundenbuch, bearb. von K. Rübel (und E. Roese). Bd. 1-3, Hälfte 1. [With] Ergänzungsbd . 1(1881)p.470
3 Simon(2006)p.280
4 Bunge et. al.(1867)sp.930
5 http://wiki-de.genealogy.net/Castrop-Rauxel
6 Köbler asW Th項p.53-54
7 Lübben(1888)p.411
8 http://www.castrop-rauxel.de/Stadtinformation_Kultur_Freizeit_und_Sport/Stadtinformationen/ Stadtportrait/Stadtnamen.asp?highmain=1&highsub=1&highsubsub=7
9 出典をメモしなかった為、典拠が不明になってしまった(泣)。
10 Köbler ahdW K項p.14
11 古ザクセンkista「箱」(>中低独kiste,keste)(Köbler asW. K項p.118)はラテン語からの借用(英chest「箱」も 同語源)。中低独godes-kaste,godes-kiste「聖櫃」(Lübben(1888)p.126)の第二要素は中高独kaste「箱」と中低独kiste,kesteの混交だろう。 この合成語以外には確認できない。
12 Köbler asW. K項p.134
13 Landesmuseum der Provinz Westfalen, Verein für Geschichte und Altertumskunde Westfalens " Westfalen."vol.51(1973)p.138
14 Kluge(2002)p.476、Köbler anW K項p.227、gW K項p.3、ahdW K項p.14、Wahrig(1981)sp.2063

執筆記録:
2011年6月22日  初稿アップ
PIE語根Kas-trop(p):1.語根不詳;2.*treb-「居住地」

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