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Elsheimer エルスハイマー
概要
「Egil、Egilīn(いずれも人名)の居住地」を意味するエルスハイム(Elsheim)という地名に由来。
詳細
Heinricus de Elsheim(1295年Mainz)1

地名姓。ラインラント=プファルツ州東部、マインツ=ビンゲン(Mainz-Bingen)郡に多い姓で、特にウンデンハイム (Undenheim)村とショルンスハイム(Schornsheim)村に集住。同じ郡にあるニーダー=オルム(Nieder-Olm)行政共同体内の シュターデッケン=エルスハイム(Stadecken-Elsheim)村にある地名エルスハイム(Elsheim:76Ia49)に因む。マインツ (Mainz)の南西15㎞に位置している。姓の分布地と由来元と考えられる地名の位置が、非常に近くである(土着の地名姓 にはよくあるパターン)。地名の歴史上の変化は以下の通り。
in Elisinhaimu marcu et Beralfesheim(793年)2
Elisinsanheim(795年)3
Igilsheim(1144年)4
Egellesheim(1184年)3
Egellnsheim/Egelsheim(1184年)4
Igelesheim(1200年)3
Egelsheim(1225年)4
Egelnsheym(1324年)4
Egelnsheim(1326年)4
in Egilsheim(1328年)5
Elsheim(1338/1341年)4
Egilsheim(1357年)4
Ylsheim(1495年)4

初出形Elisinhaimuは、ブリルマイアー(Karl Johann Brilmayer)によれば、フルダ修道院(Kloster Fulda)の不動産購入 記録簿に見える6。一方、Igilsheim(1144年)が証明しうる確実な初出と見る見解があり 7、後述するようにこの見解の方が適切と思われる。
地名の第一要素は明らかに個人名であるが、古名のブレが激し過ぎる為、その個人名の特定はなかなかに難しい。 今の所、次の2説が提唱されている。原義をそれぞれ「Eliso(人名)の居住地」とする説3、 「Egil、Egilīn(いずれも人名)の居住地」とする説である4。前者のヤイテレス(Adalbert Jeitteles)の 説は、地名の初形を793年のものに基づく解釈で、エリソ(Eliso)8という男名に因む。この男名は 古高独alles「別の、異なった」9を第一要素に持つ様々な古い男名、例えばエリサルド(Elisard) 10、アルスマル(Alsmar)10、エリスモート(Elismot) 10等の短縮名である(A-→E-の変化は、後続の[i]によるウムラウト)。Elisoは属格語尾 -nをとる名前なので793年の綴りは説明できるが、以降の古形の解釈には難が有るか。795年のElisinsanheimの -san-の要素の発生由来は良く判らない。
一方、後者のカウフマン(Henning Kaufmann)の解釈は1144年の語形が初出形と見なすもので、エギル(Egil) 11は古高独ecka,egga「刃、先端」12に指小辞の古高独-ilが 付いて作られた名前で、エギリーン(Egilīn)13は更に指小辞-īnを後続させた名前である。 いずれも属格形に-sをとる強変化タイプの個人名であるから、1144年以降の地名の古形に一貫して現れる前半要素の属格語尾と 符合するので、この説の方が理にかなっていると思う。従って、私はカウフマンの説を支持する立場をとりたい。 793年と795年の名前は同じ地名の可能性が高いが、1144年のIgilsheimまで約350年の記録の空白が有る。 ElisinhaimuはElsheimとは全く無関係の別の喪失した地名の可能性を考慮すべきだろう。
尚、この姓の持ち主で有名なのはドイツの画家、銅版画家のアーダム・エルスハイマー(Adam Elsheimer: 1578.3.18Frankfurt am Main~1610.12.11Roma)だが、当時の記録では彼の名前をAdamus Ehlsheimer von Franckfurttと 記録しているものも有る14
[Kohlheim(2000)p.218]
1 Ludwig Baur"Hessische Urkunden, aus dem grossherzoglich hessischen Haus- und Staats-Archive zum Erstenmale herausgegeben"(1862)p.503
2 Ernst Friedrich Johann Dronke,Julius Ludwig Christian Schmincke"Codex diplomaticus Fuldensis"(1850)p.437 -u語尾は複数属格形。
3 Jeitteles(1884)p.329
4 Kaufmann(1976)p.54
5 Baur(1863)p.20
6 http://www.regionalgeschichte.net/rheinhessen/region/orte/orte-e/elsheim/brilmayer. html?L=0
7 http://www.regionalgeschichte.net/rheinhessen/region/orte/orte-e/elsheim.html?L=0
8 Förstemann(1966)sp.69
9 Köbler ahdW A項p.37
10 Förstemann(1966)sp.70
11 Förstemann(1966)sp.23
12 Köbler ahdW E項p.31
13 Helga Reindel-Schedl "Laufen an der Salzach: die alt-salzburgischen Pfleggerichte Laufen, Staufeneck, Teisendorf, Tittmoning und Waging"(1989)p.46 左記の書に引用される古文書ではEgilin、Hegilinの 綴りで現わされる人物が登場するが、同一人物か。後者のH-は擬ラテン語的表現で黙字のH-を付したものだろう。
14 Gottfried Sello "Adam Elsheimer"(1988)p.11

執筆記録:
2011年1月23日  初稿アップ
PIE語根E-l-s-hei-m-er:1.*ak-「鋭い」;2.*-lo-指小辞;3.*-és-属格語尾;4.*(t)kei-「定住する、住む」 ;5.*-mo-形容詞形成語尾;6.語根不詳

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