概要
ドイツ北部にある同名の村の名に因む姓。「アマルング(Amalung)という男の村」を意味する。
詳細
地名姓。以下の地名より。
1.ドイツ中部ザクセン=アンハルト州、ハレ(Halle)の西17㎞にある地名アムスドルフ(Amsdorf(45Me40))。
Amalungesdorpf(948年3月27日)1
Amelsdorf(1200年)2
2.ドイツ、ザクセン=アンハルト州、ザルツラント郡(Salzlandkreis)ギュステン(Güsten)市にある地名
アーメスドルフ(Amesdorf)。
Amelestorp(1179年)3
Amelungestorp(1339年)3
Amesdorf(1487年)3
Amsdorf(1538年)3
いずれも「Amalung、Amelung(人名)の村」を意味する。アマルング(Amalung)
4、アメルング(Amelung)4は、
「Amal一族の者」を意味する名であるが、Amal自体の意味は明らかでない。東ゴート族の王家が伝統的に継承した個人名要素で、東ゴート王国の
テオドリクス大王の親族にアマラベルガ(Amalaberga)5、アマラフリダ(Amalafrida)
5、アマラスウィンタ(Amalasuintha)5(以上女名)、アマラリークス
(Amalaricus)5といったAmalを含む名を持つ人名が幾つか見られる。
ゴート語に*amalsという未確認の語を想定し、この語が人名要素となったとされるが、その意味も「勇敢な、有能な」
「活力、勢力」「仕事」と説が分かれている。諸書を見る限りでは「勇敢な、有能な」説を採用しているものが多く、
この中では最も有力な説とみなされる。
[Gottschald(1982)p.87]
◆ゴート*amals「勇敢な、有能な」←ゲルマン*am-「急きたてる」(古ノルドama「悩ます」)←(?)PIE*omə-,*amə-
「前に進む、固定する、保証する、苦しめる」(ギomoíios「害のある、傷みやすい、苦しみで一杯の」,古高独emizzīg「勤勉な、辛抱強い」)
6。対応がゲルマン・ギリシアの2語派しかなく、しかも各単語の意味にかなりの開きがある。
祖語に遡るのは疑わしいと思われる。
1 Ludwig August Schultes"DIRECTORIUM DIPLOMATICUM oder chronologisch geordnete Auszüge
von sämmtlichen über die Geschichte Obersachsens vorhandenen Urkunden"(1825)p.63
2 同上p.405
3 Dietrich Freydank, Kurt Steinbrück"Die Ortsnamen des Bernburger Landes"vol.26(1966)p.17
4 Förstemann(1966)p.90
5 Köbler"Gotisches Wörterbuch"(1989)p.716
6 Köbler idgW(O) p.7,Pokorny(1959)p.307
執筆記録:
2010年11月22日 初稿アップ
PIE語根:Ams-dorf:1.(?)*omə-,*amə-「前に進む」;2.*treb-「居住地」
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